郷愁と憧れとサウダーヂ


「結局、パチンコとSEXしか娯楽がないんですよね」
って彼が言った。去年の同窓会での話。僕の地元には雪が沢山積ってたな。
「いや、ツタヤとネットもあるじゃんさー」って返したけど、それじゃ全然救いがない。


さて、サウダーヂを観て来ました。いつのタイミングにしようか考えていたわけで。
自分にとってこの映画は「観ない」って選択肢はなかったのです。
渋谷のユーロスペースのオールナイトで観賞したんだけど、当初の同時上映が”シークレット”ってなってたから決めたんだ。
監督が破棄したっていう例の映像が観れるかな?って淡い期待もあったしね。


で、蓋を開けたらやっこさん、「火まつり」with 柳町光男監督トークショー。なにそれ、なんの関係性があるのかしら?
よくよく調べたら「ゴッド・スピード・ユー」の監督だし(笑)
火まつりは三重で実際にあった7人惨殺&無理心中事件を元にした映画らしいのであるが、観てるこっちはそんなの知らないから、ラストで「はあ???」ってなるわけで。


とりあえず、北大路欣也の尻と裸体がこれでもか!ってぐらいに出るので観なくてもいいかもしれません。
トークショーも別にまったく興味なし。唯一引っかかったのが、西武の堤オーナーからお金を引き出そうとした話だけです。
撮影監督さんも来てて「この撮影の直前まで逆噴射家族を撮ってたんですよね」って話もツボだった。

でさ、観客の大半は映画専門学校の生徒らしくて、料金も安いんでしょ、これを観たらみんな帰りやがるの。
別にいいけど、なんだかなーってなるわけです。


順番が逆だったら、サウターヂ観て→渋谷visionでピーターフックとベズのハッシェンダナイトに行ったんだけどなー。残念だ。


で、サウターヂだ。


ライムスターとか三角絞めでつかまえてさん(善人)とかマクガイヤーさん(いい人)の評を読めばそれで終わりなのですが、まあ、書いて行こう。
甲府を舞台にした土木建築業に従事する中年と仲間達とhiphopをやってる若者とブラジル移民達の物語なのですが、その根底に流れる「地方都市の終わりっぷりと閉塞感」がただ事じゃないのです。
関東近辺出身者の人間にとってはこんな空気感は多分一生理解出来ないかもしれない。


例えば、シャッター降りたままの商店街。
俺の街もそうだ。小さい頃走り回った商店街が壊滅したんだよ。優しかったおじさんおばさんはみんなどこかに行った(もしくはそこに留まってはいるが)
巨大なショッピングセンターが出来る。その半径数十キロ単位で八百屋も本屋もスーパーも雑貨屋も、、、ってなくなって行く。酒屋さんはコンビニになって慣れないレジとposで悪戦苦闘してる。


例えば、肉体労働者達の現実。
中学生の同級生は日雇い労働の口もそんなになくなってしまった。でも、同級生の奥さんと三人の子供を抱えて頑張ってる。
話す話題が子供とお金がないって辛気くさいのばかりになった。呑気にプロレスの話してるの俺だけだし。


例えば、風俗産業。
スピードはヤバいけどガンジャと×が気軽にある風景。若者はみんなhiphopにかぶれている。テクノもパンクも聴いてくれない。
やっぱりSEXとパチンコとツタヤだけなんだ。それでも十二分かもしれないけどさ。


甲府には半年前に行ったんだ。駅前をぷらぷら歩いてアニメイトで漫画買ってとアレな感じだったけど、商店街を観て「ああ、一緒だなあ」って想ったんだな。
そりゃあ、タイ人ホステスにハマったりガンジャ吸ってラリッたり×喰ってキスしても俺は許したいって気持ちになるわけですよ。


実際の各シーンがリアルすぎて吐き気すらするわけです。まあ、本人が本人役で出てるみたいなもんだし本職は本職だし。
部屋の感じもそうだ。新井英樹の漫画そのままだ。
本当に全てのシーンか決まってるので記憶にこびり付き易いっつー超不思議な作品だった。


でもだ、これを観て希望があったのかなかったのかが解らなかった。
最後にあるようなシーンを見せるが、これを撮った監督は何よりも現実を知っているので本当の所は解らないままだ。


そして、不格好なまでに本作が長い。
「本が厚くなるのはその人の技量が足りないから。もっと経験を詰めば短くまとめられるはず」って先日作家さんと飲んだ時に言ってた台詞を想い出した。
まあなあ、これ以上は切れなかったんだろうなあ。本当にいいシーンばかりだ。レイアウトが最高だ。


さてさて、この文章の結論はなんだろう?


流れる音楽はステキすぎて彼に惚れてしまうぐらいなのよ。
「音楽は人を救うかもしれない」って自分は信じているんだ。だからここまでレコードを毎月アホみたいに買ってるんだし。
でも、これを観た後だとそれが揺らいでしまっているのかもしれないな。




、、、、、、、、ダメじゃん(笑)







おしまい。